特権ID管理(PIM)

Microsoft Entra PIM 入門
― 必要なときに、必要な期間だけ、最小限の特権を

PIM(Privileged Identity Management)の目的は、管理者権限の常時保持によるリスクを最小化すること。強力な権限を持つアカウントが万が一乗っ取られた場合、テナント全体に甚大な被害が及ぶリスクがあります。PIM の割り当ての種類・期間、アクティブ化の運用フロー、ライセンス要件までを解説します。

PIM(Privileged Identity Management)とは

PIM は「必要なときに、必要な期間だけ、最小限の特権を与える」というアプローチで、Microsoft Entra のロール(管理者権限)を統制する機能です。管理者権限を常時持たせず、使うときだけ有効化する Just-in-Time の運用に切り替えることで、常時特権という最大のセキュリティリスクを排除しつつ、管理者の実務を阻害しない運用を確立できます。

割り当ての種類と期間

割り当ては「対象」「アクティブ」の2種類。それぞれに「永続」「期限付き」の期間を設定できます。

対象(eligible)

申請して使う「資格」の割り当て

ユーザーに「必要なときにロールを申請する資格」を与える割り当て。普段は権限を持たず、必要になったら自分で申請(アクティブ化)して一時的に権限を使える状態にします。アクティブ化の条件として Azure MFA・「理由が必要」・「承認が必要」を組み合わせて運用できます。

アクティブ(active)

申請なしで有効な割り当て

従来の割り当てと同じく、申請手順を踏むことなく権限が有効な状態になります。手動申請ができない自動ツールのサービスアカウントや、効率を重視したい非稼働環境(検証環境)の作業アカウントでの利用が想定されます。

永続(Permanent)

期限なしの割り当て

期限なしでその状態が続きます。「対象」「アクティブ」のどちらにも設定できます。

期限付き(Time-bound)

期間を区切った割り当て

開始日時と終了日時を指定し、その期間だけ状態が維持されます。アクティブ化した権限は終了日時を過ぎると自動的に無効化され、権限を返却する操作は不要です。

「永続アクティブ」は原則使わない: 期限を設定しない「永続アクティブ」は従来の直接割り当てと同じ状態になり、セキュリティリスクとなります。本番環境で永続アクティブを選択する唯一の正当な動機は、テナントのロックアウト等に備える緊急アカウント(ブレークグラス)です。不測の事態で PIM 自体が停止してもサインインできるよう、グローバル管理者を永続アクティブで確保しておくことがベストプラクティスとされています。

「対象(eligible)」ロールの運用フロー ― 5ステップ

Azure ポータルの「Microsoft Entra Privileged Identity Management」から設定します(記事ではセキュリティ閲覧者ロールを例に解説)。

1

ロール設定の編集

対象ロールの [設定] > [編集] を開き、[アクティブ化] タブで「アクティブ化に理由が必要」にチェックが入っていることを確認。「アクティブにするには承認が必要です」にチェックを付け、承認者を選択します。

2

資格の割り当て

[割り当ての追加] からユーザーを追加し、[設定] タブの [割り当ての種類] で「対象」を選択。割り当ての有効期間もここで設定します(「永続的に有資格」も選択可能)。

3

アクティブ化の申請

利用者は PIM の [自分のロール] > [資格のある割り当て] から [アクティブ化] をクリックし、理由を入力して申請します。翌日以降の作業に備えた事前申請は「カスタムアクティブ化の開始時刻」で設定できます。

4

アクティブ化の承認

承認者は [申請の承認] から対象の申請を選んで承認し、理由を入力して確定します。申請が24時間以内に承認されなかった場合は自動的に却下されます(この承認時間枠はシステム固定で変更できません)。

5

アクティブ化の確認

該当ロールの [アクティブな割り当て] タブで、権限がアクティブ化されたことを確認します。

「アクティブ(active)」の割り当ては2ステップ: ①ロール設定の編集([割り当て] タブで「永続するアクティブな割り当てを許可する」のチェックを外し、有効期限を設定)→ ②割り当て([割り当ての種類] で「アクティブ」を選択し、開始・終了日時と理由を入力)。管理者が付与した瞬間からアクティブになり、ユーザー側のアクションは不要です。

ライセンスと運用のポイント

機能Entra ID P1Entra ID P2ID Governance / Suite
Privileged Identity Management (PIM)
PIM For Groups
PIM 条件付きアクセス制御
ライセンスの注意: PIM の利用や設定、承認、アクセスレビューに関わるユーザー全員分のライセンス(Microsoft Entra ID P2 / Microsoft Entra ID Governance / Microsoft Entra Suite のいずれか)が必要です。

既定の承認者

承認者を明示的に指定しない場合、テナントの「特権ロール管理者」または「グローバル管理者」が既定の承認者として機能します。

グローバル管理者は5人未満に

Microsoft のベストプラクティスとして、グローバル管理者は組織内で5人未満に割り当てることが推奨されています。

割り当て10件超で警告

特権ロールの割り当てが10件を超えると、管理ポータルに警告が表示される仕様になっています。

参考記事(QES ブログ)

本ページは当社エンジニアによる解説記事をまとめたものです。画面キャプチャ付きの詳しい手順は記事をご覧ください。

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